宮崎大学病院は「都道府県がん診療連携拠点病院」に指定されており、県下の他の「地域がん診療連携拠点病院」、すなわち、県立宮崎病院、国立病院機構都城病院、県立日南病院、県立延岡病院の4病院との連携を求められています。
あまりに多様化している泌尿器科疾患治療に対して、これら全病院がそれぞれで全てのオプションをそろえることはほぼ不可能であり、限られた医療資源を有効に活用するために地域連携を組織的に進めていくことは必須と考えられます。
「宮崎県泌尿器科医療連携(MiU-NET)」はこのような観点から、泌尿器科疾患の診療を基幹病院と地域の医療機関で役割分担をすることを目的としています。
宮崎県の泌尿器科疾患における地域連携として平成23年1月より宮崎県泌尿器科医療連携を開始致しました。
Miyazaki Urological Networkの文字を使ってMiU-NETという名称にしております。
まずは前立腺癌診療の地域連携でありますPSAパスを開始致しました。
地域連携とは、患者さんを中心に地域の医療機関と情報交換を行い、よりよい医療と安全を提供する仕組みです。
それぞれの医療機関の間での患者さんの情報交換には「地域連携診療計画書(地域連携クリニカルパス)」を用います。
地域連携クリニカルパス(地域連携パス)は各医療機関が一緒に作った“診療計画書”のことです。
これまでは基幹病院の主治医が診断・治療を行い、退院時にはかかりつけの先生に治療の継続をお願いしておりましたが、地域連携パスを用いることで、退院後も定期的に病院へ受診していただき、かかりつけの先生より退院後の情報を得ながら、緊急時には病院で対応ができる形をとります。つまり患者さんにとっては主治医が複数になることになります。
基幹病院では治療の専門性や救急時の対応ができるという利点がありますが、予約外では主治医が診察できない、通院には時間と通院方法に制限ができるなどの欠点もあります。
その点、かかりつけの先生ではいつでも近くですぐに診察していただけるという安心があります。それぞれの病院での利点を使うところが、地域連携パスのメリットです。
基幹病院とかかりつけ医の利点と欠点
基幹病院 | かかりつけ医 | |
---|---|---|
治療の必要性 | ◎ | 泌尿器科全般 |
緊急時の対応 | ◎ | 設備、マンパワー問題で限界 |
予想外の受診 | 曜日制 | 常にかかりつけ医の診察 |
通院の便利さ | 平日の日勤帯 | ◎ |
社会的な側面への配慮 | △ | ◎ |
"理想的な"地域医療連携
以下のボタンをクリックしていただきますと初回登録用紙がダウンロードできます。
それぞれ以下のボタンをクリックしていただけますとPSAパスがダウンロードできます。
前立腺癌診療に地域連携パスが必要な理由と致しましては、以下の点が挙げられます。
前立腺癌の診断・治療の流れは、PSA高値で泌尿器科を受診し、その後生検、病期診断、治療となります。それぞれ治療を行った後は、再発の有無に関し経過観察となり、この経過観察にPSAパスを適応することになります。
以下の各内容に関して、PSAパスとして統一した方法で経過観察と治療を施すことを行います。
将来的には宮崎県全県の内科開業医の先生とも、情報交換を密にし、特にその経過観察においては、患者さんが最も受診しやすい環境を整備することを目指します。
以下のボタンをクリックしていただきますと初回登録用紙がダウンロード できます。
以下のボタンをクリックしていただけますと腎癌手術後パスがダウンロードできます。
宮崎大学で過去10年間において腎癌の手術を行った患者さんの腎癌特異5年生存率は病理学的深達度がT1-T2では90%以上と、予後はとても良好です。しかしながら腎癌では術後10年以上経過しても再発する晩期再発もありますので、術後長期の経過観察が必要となります。また腎癌の手術後は再発の評価と共に腎機能の評価も必要となります。腎癌手術後パスは基幹病院の主治医とかかりつけの先生が共通の手術後の評価項目を認識し、かかりつけの病院で検査を行い、異常があるときには基幹病院を受診する。また異常がない場合でも1-2年毎の定期的な診察を基幹病院で行っていくという地域連携です。
宮崎大学における腎癌手術症例の癌特異5年生存率
病理学的深達度 | 症例数(%) | 癌特異5年生存率 |
---|---|---|
pT1 | 138 (65) |
97.7 |
(pT1a) | 91 |
100 |
(pT1b) | 47 |
94.2 |
pT2 | 13(6) |
90.9 |
地域連携計画書